2024年パリオリンピックが近づく中、女子ボクシング66キログラム級で注目を集めるエイマヌン・ハリフ選手。
その注目の理由は、彼女の性別や染色体に関する疑問から来ています。
ハリフ選手は「XY染色体」を持つ女性として知られており、これがトランスジェンダーであるとの憶測を呼んでいます。
しかし、彼女の生まれながらの性別や体質に関する真実が何なのか、詳細に見ていく必要があります。
今回は、その背景と現在の状況について掘り下げてみましょう。
ボクシングの歴史とオリンピックでの進化
ボクシングの起源は不明ですが、紀元前3000年頃の古代シュメール(現在のイラク)で発見された石板にボクシングの描写が見られることから、これが最古の証拠とされています。
ボクシングは紀元前688年の古代オリンピックで競技として取り入れられ、当時は手や前腕に柔らかい革ひもを巻きつけて保護していました。
一時、ローマ帝国の崩壊に伴い姿を消しましたが、17世紀にイギリスで復活し、1880年にはイギリスアマチュアボクシング協会が設立され、近代ボクシングの歴史が始まりました。
当初は5つの階級(バンタム級、フェザー級、ライト級、ミドル級、ヘビー級)がありました。
オリンピックのボクシングルール
オリンピックのボクシングでは特別なルールが適用されています。
以前はアマチュア選手のみがオリンピックに出場できましたが、プロボクサーがオリンピックでキャリアのスタートを切ることもありました。
1960年のローマオリンピックでは、モハメッド・アリ(当時はカシアス・クレイ)がライトヘビー級で金メダルを獲得しました。
また、村田諒太選手はロンドン2012オリンピックでミドル級金メダルを獲得しました。
1984年から2012年までは、男子選手はヘッドガードを着用することが義務付けられていましたが、リオ2016からは男子選手に対してこの規定は撤廃されました。
試合は男子が3分間3ラウンド、女子が2分間4ラウンドで行われ、ジャッジは各ラウンドの終了後に10点を勝者に、敗者には7〜9点を付与します。
試合終了時に総ポイントで勝者が決定されます。
オリンピックでのボクシングの歴史
近代オリンピックにおけるボクシングの登場は、1904年のセントルイス大会が初めてでした。
それ以降、1912年のストックホルム大会を除き、すべての夏季オリンピックでボクシングが行われています。
女子ボクシングがオリンピックに初めて採用されたのはロンドン2012大会でした。
セントルイス大会では、アメリカ合衆国がメダルを独占し、その後も米国は117個のメダルを獲得しています。
(続いてキューバが78個、イギリスが62個)
イマネ・ヘリフ選手の注目点と背景
イマネ・ヘリフ選手は、女子ボクシングに出場しているにもかかわらず「XY染色体」を持っているため注目されています。
通常、XY染色体は男性に見られるもので、女性はXX染色体を持っています。
そのため、一部ではイマネ・ヘリフ選手がトランスジェンダーであるという誤解が生じましたが、実際には彼女は生まれながらの女性です。
イマネ・ヘリフ選手がXY染色体を持っているのは、「性分化疾患」と呼ばれる病状によるものです。
この疾患は、性別の決定過程に異常が生じ、性染色体や外性器が通常とは異なる状態を引き起こすことがあります。
東京オリンピックとパリオリンピックの結果
イマネ・ヘリフ選手がXY染色体を持っていることで不公平とされる声もありますが、実際には2021年の東京オリンピックには特に問題視されませんでした。
問題が顕在化したのは2023年の世界選手権でのことです。
東京オリンピックではベスト8まで進出し、アイルランドのケリーアン・ハリントン選手に敗れました。
パリオリンピックでは、女子ボクシング66キログラム級決勝が8月9日に行わました。
アルジェリアのイマネ・ヘリフ選手が中国の楊柳選手を5-0の判定で下し、金メダルを獲得しました。
会場では観客がアルジェリアの国旗を掲げて、ヘリフ選手の新たな栄冠を祝いました。
まとめ
2024年パリオリンピックの女子ボクシング66キログラム級で注目されるエイマヌン・ハリフ選手の性別と染色体についての議論が続いています。
彼女は「XY染色体」を持つ女性として知られ、一部ではトランスジェンダーであるとの憶測もありました。
しかし、実際には性分化疾患という病状によりXY染色体を持つ典型的な女性です。
アルジェリア出身の彼女は、生まれながらの女性として競技に臨んでいます。
パリオリンピックでは、この特異な状況がどのように扱われるのか注目されています。