最近、厚生労働省が遺族厚生年金の給付見直しを発表しました。
特に注目されているのが、子どもがいない世帯への給付期間の短縮です。
現行制度では30歳以上の妻には生涯にわたって支給されている遺族厚生年金が、今後は5年間に限定される可能性があります。
この変更は、専業主婦にとって特に大きな影響を及ぼすでしょう。
専業主婦は収入源を持たないことが多く、夫の年金に頼って生活しているため、この制度変更により将来の生活設計が大きく揺らぐことになります。
今後の議論の行方に注目が集まります。
遺族年金の種類について
遺族年金は、家計を支える家族が亡くなった際に、遺族に支給される公的な年金です。
以下の種類があります。
・遺族基礎年金
・遺族共済年金
・遺族厚生年金
国民年金や厚生年金に加入している人、または過去に加入していた人が亡くなった場合、遺族に遺族年金が支給されます。
2015年10月に遺族共済年金は遺族厚生年金に統合され、公務員などの共済組合員の遺族も遺族厚生年金を受給することになりました。
遺族基礎年金
遺族基礎年金は、国民年金の被保険者や老齢基礎年金の受給資格を持つ人が亡くなった際、一定の条件を満たす遺族に支給されます。
国民年金はすべての国民が対象となるため、会社員、公務員、自営業者、パートやアルバイトの遺族も支給対象になります。
ただし、子どもがいる配偶者が遺族基礎年金を受給している場合や、同居している親がいる場合は、子どもに対する遺族基礎年金の支給はありません。
遺族厚生年金
遺族厚生年金は、厚生年金保険の被保険者や老齢厚生年金の受給資格者が亡くなった場合に支給されます。
支給対象は以下の通りです。
・配偶者
・18歳未満の子供や孫、または20歳未満で障害年金の1級・2級の子供や孫
・夫や父母、祖父母
遺族厚生年金の対象は、会社員や公務員の遺族ですが、過去に会社員だった自営業者も一定の条件を満たせば受給可能です。
受給には
「亡くなった方によって生計を維持されていたこと」
が必要で、具体的には以下の状況が該当します。
遺族厚生年金給付の見直し
厚生労働省は、18歳未満の子どもがいない世帯の遺族厚生年金給付を見直す方向で検討しています。
主な変更点は以下の通りです。
・子どもがいない場合、20代から50代の配偶者への給付は5年間のみ。
・現行では30歳未満の妻に対して5年間の給付、30歳以上の妻には生涯給付されていますが、これを見直し、20代から50代の妻も5年間の有期給付に統一。
・妻を亡くした夫に対しては、現行では55歳までは受給権がなく、60歳からの支給ですが、見直し後は20代から50代に対して5年間の有期給付とする予定。
この見直しは、子どもがいない世帯にのみ適用され、子どもがいる世帯や60代以上の世帯は現行制度のままとなります。
また、夫を亡くし子どものいない40~64歳の妻に上乗せされる「中高齢寡婦加算」も段階的に廃止する方向です。
この案は、7月30日の厚労省・年金部会で提示され、2025年の通常国会に関連法案を提出することを目指していますが、反対意見も予想されます。
まとめ
遺族厚生年金の給付見直しは、特に専業主婦にとって大きな課題です。
従来、夫の死後も安定した収入源として頼りにしてきた年金が、5年間のみの支給に限定されることで、生活設計が根本から揺らぐ可能性があります。
専業主婦は自身の収入が少ないため、この変更は深刻な影響を及ぼします。
社会全体での家族支援のあり方を再考する必要があります。
子どものいる世帯や高齢者世帯には現行制度が維持されるとはいえ、全体的な福祉のバランスを見直すことが求められています。
政策変更の行方とその影響について、今後も注視が必要です。