2024年4月、日銀が長年の低金利政策から脱却し、利上げに踏み切る可能性が高まっています。
この動きは市場に大きな波紋を広げることでしょう。
特に株価への影響が注目されています。過去の事例から見ると、利上げは一般的に株価に対してネガティブな影響を及ぼすことが多いですが、今回の日本経済の状況は一筋縄ではいきません。
賃上げやインフレ率の上昇が続く中、企業収益や投資環境にどのような変化が起きるのか。
この記事では、日銀の利上げが株式市場に与える影響について、過去のデータや現在の経済情勢をもとに分析していきます。
日銀の金融政策変更
日銀が今後の金融政策で重視するのは、「インフレ率2%達成の確実性」であり、特に賃上げの広がりに注目しています。
賃金の上昇とサービス価格の上昇が連鎖することで、需要が供給を超える「ディマンドプル型インフレ」が起こるかどうかが鍵となります。
実際、2024年の春闘でも賃上げ率は4%近くに達する見込みであり、これが二年連続となります。
日銀は、定期昇給分を除いても約2%のベースアップがあったことを確認し、2%の物価目標の安定的実現が近づいたと判断する可能性が高いです。
市場エコノミストの間でも、この見解は広がりつつあります。
日銀の現行金融政策は複数のツールを組み合わせたもので、これらの政策が一斉に変更される可能性があります。
最近の日本銀行の発表に基づけば、以下のような政策変更が予想されます。
マイナス金融政策の修正
無担保コール金利をゼロ〜0.1%に誘導する可能性があります。
内田真一副総裁は、この政策について言及しています。
YCC(イールド・カーブ・コントロール)の長期金利ターゲット解除
2022年末以降、10年国債金利は0.6%程度で推移しており、インフレ期待の高まりで事実上無効化していますが、一部のYCC機能は残ると見られます。
「オーバーシュート型コミットメント」の撤廃
物価が2%を安定的に超えるまでという条件が満たされた場合、政策が変更される可能性があります。
ETF・REIT購入の終了
過去数年ほとんど使用されなかったこの枠組みが終了する可能性があります。
これらが実現すれば、長期金利上昇を抑える以外の多くの「非伝統的」金融政策はなくなり、政策金利の引き上げは2007年以来17年ぶりとなります。
日銀の利上げリスク
4月に予定されている日銀の利上げについては、過去の例からリスクを懸念する声があります。
2000年代には日銀の利上げ後、経済が再び停滞しデフレに戻ったため、今回も同様のリスクがあると見る人も多いです。
しかし、現在の経済状況は2000年代とは異なります。
春闘での賃上げ率が2年連続で約4%に達し、企業が積極的に賃上げを行っている点が挙げられます。
また、2000年代にはなかった「2%インフレ目標」が現在は政府と日銀で明確にコミットされています。
仮に利上げ後にインフレ率が目標を下回れば、日銀は再び金融緩和を強化することになるでしょう。
安倍政権が「金融緩和のレジーム転換」でデフレを和らげた事実も、政策決定に影響を与えています。
総じて、筆者は日銀の金融政策転換が近づいており、2000年代のような経済停滞とデフレに戻るリスクは低いと予測しています。
ただし、日本経済が依然として不安定なため、日銀の政策転換を時期尚早と見る識者も少なくありません。
円安の追い風
日銀の政策転換が予想される中、円安の追い風は弱まる可能性があります。
現在、円安が日本株高を後押ししていますが、4月以降は様相が変わるかもしれません。
まとめ
日銀の利上げは、日本経済と株式市場に多岐にわたる影響をもたらすでしょう。
過去の事例では、利上げが株価に対してネガティブな影響を及ぼすことが多かったですが、現在の状況は一概に言えません。
賃上げやインフレ率の上昇、そして企業の収益構造が変化している今、利上げがどのような波紋を広げるのか注視する必要があります。
短期的には市場の不安定化や株価の調整が予想されますが、長期的には安定したインフレと経済成長への期待が高まる可能性もあります。
今後も日銀の動向と経済指標を注意深く見守りながら、投資戦略を練ることが重要です。